「肥満は悪くない?」って本当か? (その3)〜異所性脂肪について(号外)

2010年3月6日(土)午後10時から放送された
NHKの[追跡AtoZ]「肥満は悪くない?」という番組を見た人たちは、
「肥満しても大丈夫なのだ!」
「やせなくてもOKだ!」などと誤解している人が多い。
番組の冒頭に次のようなナレーションがあった。


「やせたネズミの血糖値は358で異常、太ったネズミは105で正常」
「68.5kgの男性が73.5kgに太った結果、血糖値は246から109に改善」
「異所性脂肪を減らし、糖尿病を予防するには皮下脂肪を増やすこと」


それらの解説を聞くと、
肥満している視聴者は誤解して安心することだろう。
ところが、次のような疑問が生じる。


「やせたネズミと太ったネズミの体重に占める脂肪量の割合は?」
「2匹のネズミに与えていたエサの内容は同じか、違うのか?」
「2匹のネズミの運動量に違いはないか?」


「68.5kgと73.5kgのそれぞれの体脂肪率は?」
「5kg増加した体重の内、脂肪量で何kg増えたのか?」
「男性の食事内容は、68.5kg時と同じか?それとも変わったのか?」
「5kg体重が増えるまでの間の運度量は、太る前と同じか?」

「皮下脂肪だけを増やす方法は?」


それらの疑問は、科学的に「肥満は悪くない」と
証明するための最低限の条件である。


「エサと食べ物」と「運動量」の内容によっては、
「脂肪量の比率」「血糖値」そして、
「皮下脂肪か、内臓脂肪か、異所性脂肪かの蓄積」などが異なる。

すでに述べたように、力士やプロレスラーのように体格が大きい、
または、体重だけでは肥満であるかどうかは分からないのである。

さらに、脂肪の沈着する部位が、皮下組織か、腹腔内か、
あるいは異所性脂肪として臓器なのかは、
摂取食物のバランスと運動習慣によって決まるのである。
特に皮下脂肪量を増やすためには、運動習慣が不可欠である。
いずれにしても、「you are what you ate.」である。


同番組では、異所性脂肪の対策として、
「食生活の改善」と「毎日、1万歩、歩く」こととしている。
ハンバーグを食べる回数を減らすことができるかもしれない。
しかし、普通に生活している人が、毎日、1万歩、歩けますか。


異所性脂肪は、分解・燃焼は脂肪細胞よりも早い。
皮下脂肪や内臓脂肪の細胞は、
球状であり膜内に中性脂肪として蓄えられている。
膜内の中性脂肪を分解し燃焼させるためには、
膜を通り抜けるために酸に変換する必要がある。


ところが、異所性脂肪は球状ではなく、
脂肪そのものが膠状になって、臓器に付着している。
したがって、脂肪細胞のように
膜を通過するプロセスの必要がないので分解・燃焼が早いのである。


糖尿病などを予防するには、従来から指摘されているように、
健全な食生活の実践と運動習慣が必要である。
だから、異所性脂肪を無くするために、特別な手段は必要ない。
運動不足解消のために、
ストレスを感じながら連続1万歩、毎日歩く必要もない。
家庭で、職場で、こまめに体を動かす習慣を身につけることである。
連続の1万歩でなく、
断続的な運動であっても、その効果は同じである。
「10分×10回=100分の運動」である。(続)