(号外) NHK〜追跡AtoZ「肥満は悪くない?」〜異所性脂肪について(その1)

2010年3月6日(土)午後10時から放送された

NHKの[追跡AtoZ]「肥満は悪くない?」について、

その問題点を指摘する。

なぜなら、この番組を見た視聴者の多くの人は、

「肥満しても大丈夫なのだ!」

「やせなくてもOKだ!」などと誤解している人が多いからだ。


番組のテーマは「異所性脂肪」で、第三の脂肪と呼ばれている。

「異所性」は医学用語で、「異所性蒙古斑」が知られている。

生後、背中の腰のあたりに「青い斑」が出るのが普通であるが、

この斑が顔や他の部位に出ることを「異所性蒙古斑」という。


脂肪の多くは、皮下組織(皮下脂肪)と腹腔内(内臓脂肪)に蓄積される。

異所性脂肪は、字のごとく、異なった場所(臓器)に沈着する。

心臓やすい臓などに付着して、その毒性で臓器を損傷させる。


皮下脂肪や内臓脂肪の細胞は、

球状で膜内に中性脂肪として蓄えられている。

ところが、異所性脂肪は球状ではなく、

膠(にかわ)状であり、臓器にべったりと付着する。


例えば、すい臓に付着するとその毒性で損傷させて

インスリンの分泌機能を麻痺させる。

この結果、同化作用が衰えて糖尿病を発症させる。


同番組の被験者に「肥満者」と「非肥満者」が登場した。

肥満者の代表格として相撲の力士、

正常者として普通の男性が比較された。

検査の結果は、力士は「正常」、普通の男性は「異常」であった。

この肥満者の力士が正常であったから、

「肥満は悪くない?」というタイトルになったのである。


問題は、力士を肥満者として扱っていることである。

多くの視聴者もお相撲さんは肥満していると、思い込んでいる。

たしかに、皮下脂肪でブヨブヨの体形をした力士もいる。

ところが、多くの力士は「体格が大きい」のであり、

肥満者ではない。横綱白鵬を肥満者と思いますか。

番組に出演していた力士は着物姿であったが、

皮下脂肪でブヨブヨの体形ではなかった。


肥満の判定基準の「BMI値」に基づくと、

力士は全員が「肥満」の判定になる。

プロレスラーの人たちも「肥満者」になる。

このBMI値には、

肥満の根拠になる「脂肪量」という要素は入っていない。

さらに、「性別」「年代」という要素もない。

だから、番組では「力士=肥満者」と

「普通体形=非肥満者」を比較しているのである。

                           (続)